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玉藻

玉藻

中世の王朝社会と院政

中世の王朝社会と院政

白根 靖大氏著(吉川弘文館)
(平成12年2月10日・第一刷発行)



【内容】
院司の基礎的考察
院宣の基礎的考察
院政期の神宮奉行について
関東申次の成立と展開
中世前期の治天について
院政と昇殿制
王朝社会秩序の中の武家の棟梁
承久の乱の歴史的意義
鎌倉後期の公家社会と治天 など



第一章・第二章では院司と院宣について、再確認すべき点が多々あることを感じました。また、神宮奉行の短期間性についても、仏道修行のための禁忌に阻まれていたことが、判ったと同時に、当時の土地をめぐる訴訟についても学ぶ所が多く思いました。
京における関東申次の吉田経房・一條家・坊門家・摂政家の一時預かり→西園寺家の一本化への変転は、その頃の政治形態の大きな勢いを見たような気がして、もう一度考え直さなければならない、と反省しています。というのも、もともと関東申次は、一條家・西園寺公経の頼朝個人の婚家の力のみを見ていたので、実朝婚家の坊門家に関しては、軽く感じていたからです。今更ながら、思いこみと浅学を恥じてしまいます。
特に公経の動向が、以前に感じていたものと違っていたのには驚きました。
それにしても承久の乱について、真っ向から論じられている文献が少ないと知り、残念です。
この書籍の家格形成の上昇を目指す貴族・武家のあり方に対する考え方が、漠然と感じていた事と多くの共通点があると思いました。
「年初の朝覲行幸は儀礼だけでなく、意義のある一行事」として論じられていた事で、家長日記や三長記に出ている院殿上人精選も、今一度見直してみようと思えます。
ただし後嵯峨~後醍醐期に関しての、両統の治天交代の意義は、かなり難しくて手に余ってしまいました。




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